武田教授に反論!!

武田邦彦(中部大学特任教授)先生は、テレビやメディアに毎日のように出演し、環境にとどまらず、原子力関係にも造詣が深く、分かりやすい解説をしてもらっている、殆どの聴衆者が、ああ、あの先生よく見ると言われる高名な先生です。もう10年以上前のことですが、プラスチック製品を削減しようとする運動の一環で、レジ袋を有料化しようとするときに、いち早くその誤謬を指摘し、プラスチック製品は、回収して、再利用するよりは、燃料として使った方が、省エネになると科学的に主張され、その解説の独自性は、時代の寵児になった勢いがありました。

武田先生の主張には、プラスチック製品を回収して、再利用できるようにするには、原油からプラスチック製品を作るためのエネルギーの数倍が必要となるので、省エネに反し、再生させるのではなく、そのまま燃料として活用した方が、環境にやさしいことになる。この意味では、レジ袋の有料化は、環境にやさしいのではなく、スーパーマーケットの利益にやさしくなることなので、現実は、裏に隠れた企業の営利主義に、騙されないで、環境、環境という人間性に訴える甘い言葉に騙されてはいけない。科学的に考えなければならないと警鐘を鳴らされていたと思います。

確かに、ゴミの焼却場を見学した時に、焼却場の説明員に生ごみの燃焼に重油を使用してますが、レジのゴミ袋が混ざっていると、投入する重油は減るかどうか聞いたところ、ゴミ焼却場としては、レジ袋が適当量入っている方が、重油が節約できると、言っていることを思い出しました。かなりの水分を含んだ生ごみを燃焼させるためには、プラスチック製品のレジ袋が入っている方が、良いと、ゴミの焼却場では、言っているのです。この意味では、武田先生の説は正しいことになります。

しかし、プラスチック製品を回収するより、再生させる方が数倍のエネルギーがかかるということは、疑問があります。エネルギーとコストは比例します。現在、殆どの市町村では、プラスチック製品を回収して、再生をしています。再生に数倍かかるエネルギー、すなわちコストを、市町村は税金で賄っているのでしょうか?経済メリットが無ければ、継続はできません。プラスチック製品の回収と、再生には、ある程度の経済メリットがあるはずです。武田先生は、この点はについては、説明がありません。

また、「 筆者の友人で新潟の海岸線に住んでいる方からのメールによると、「確かに海岸に漂着するプラスチックごみは多いが、その大半は中国で捨てられたことが明らかだ。また、私は一度もストローは見たことがない」という。 」記載がありましたが、下記の記事を見てもらうと、その実態が実感できます。

中国の環境汚染 画像(中国の河川や大気の環境汚染が衝撃的すぎる。もう中国製品は買えない?!(画像)
フィリッピンの川の汚染(まるで「舗道」、ぎっしり川を覆うごみ マニラ)
インドネシアの川の汚染(「世界で最も汚染された川」 水質改善に本腰 インドネシア)
インドネシアの川の汚染世界で最も汚い川のひとつ、インドネシア、チタルム川

これらの川の写真を見ると、プラスチックのゴミがこれらの国の川から海に流れて、南シナ海、東シナ海を渡って日本にたどり着いていることは容易に想像がつきます。プラスチックごみ問題、アジアの責任は?のサイトの説明にも「米ジョージア大学の工学者ジェンナ・ジャムベックの試算では、2010年の時点で、廃プラスチックの半分はアジアの5カ国(中国、インドネシア、フィリピン、ベトナム、スリランカ)で発生しているという。「北米とヨーロッパで100%リサイクルしたとしても、海洋に流出するプラスチックの全体量はほとんど変わりません」と言うのは、米国と祖国インドでこの問題に取り組んできた米ミシガン州立大学の化学工学者ラマニ・ナラヤンだ。「この問題に対処するには、これらの国々に出向いて、処理方法を改善するしかありません」とあり、武田先生の推察通り、日本の海岸沿いに打ち上げられているプラスチックは、これらアジアの5か国から排出されていると断定できます。

日本の川で、これほど、プラスチック製品でおおわれている川は見たことがありません。有名な繁華街に流れる川、大阪ミナミの道頓堀川、東京の隅田川、名古屋の堀川、博多の中州の那珂川と博多川にも多少のプラスチックごみが浮いていることは見ることがあります。アジアの川とは全く違います。古いデータですが、2011年に発表されたの国土交通省のデータによると、国が管理する全国165河川の2010年の水質ランキングワースト5は綾瀬川(埼玉、東京)、猪名川(大阪、兵庫)、中川(埼玉、東京)、 大和川(大阪、奈良)、鶴見川(神奈川)。

平 成 2 2 年全国一級河川の水質現況(国土交通省発表))過去10年間にBOD値が大幅に改善されている河川は、大和川(大和川水系)及び綾瀬川(利根川水系)などであった。大幅に改善されたということは、以前はよっぽど汚かったということです。 

1980年から15年連続で全国の一級河川水質ランキングのワースト1位にランキングされた川は、 草加市を流れる綾瀬川(あやせがわ) の清掃活動が紹介されていますので、そのサイトを見てください。 草加パドラーズ

この日本で一番汚い川だった 綾瀬川(あやせがわ)でも、アジアの川に比べるとまだまし。これらのことをよく見てみると、武田先生の説は、正しいと思います。ただし、ただし、

どんな高名な先生でも、その説がすべて正しいことはありません。人は、高名さに幻惑されて、信じやすいものです。特に、最後に案内する、武田先生の「「プラ製ストローは害」という欺瞞に日本人が付き合う道理はない」に対しては、説明の不足を感じます。高名な先生の説は、影響力があるだけに、慎重に願いたいものです。

昨今のプラスチックストローに対するヒステリックな取り上げ方は、異常で、プラスチックストローだけが悪者にされている現象については、武田先生に同感するが、暴論に近い意見は、ショック療法で、受けを狙ったものに感じ、その影響力を考えると、謙虚さにかける、学者としていかがなものかと思わざるを得ない。武田先生の説とは一体どんなものと思われる方は、最後に引用してある記事を(記事のURL)ご覧になってから、この反論を見られた方が理解しやすいと思います。

記事の中に、「 環境省などによると、石油などから作られるプラスチックは年間約4億トン近く製造され、そのうち、約800万トンが海に放出されているという。だが、特殊で高価な工業部品以外のプラスチックは比重が1・0以下で軽く水に浮くので、もし分解されなければ海の表面を覆うはずである。すでに40年ほど前からプラスチックは大量に使われているので、海に放出されたプラスチックがそのまま漂流を続けていたら、海水面はプラスチックで覆われている計算になる。 」とありますが、プラスチックは紫外線で劣化して、細分化し、海の波にもまれるうちに細粒化することは、科学者であればご存じのはずです。また、物質は、小さくなっていくと、その物質の成分では予想できない挙動を起こすことも、ご存じのはずです。海で漂流しているプラスチックごみは、細粒化して海水に溶け込んだような状態になることは、ご存じのはずです。そのことを科学者らしく説明しないで、「 もし分解されなければ海の表面を覆うはずである。」 と現在、海の表面を覆っていないので、プラスチックごみは影響がないと思わせるような表現は、いかがなものかと思うのです。

「そもそも、プラスチックは油性だから海に存在する有害な有機性化合物が付着すると言われているが、魚もプランクトンもプラスチックと同じ油性である。プランクトンや魚の存在量は明確ではないものの、40億トン程度とみられ、それからみると、プラスチックの流出量は0・2%に過ぎない。ゆえに、大量の油性生物に対し、プラスチックが環境を汚染することはあり得ない。 」この武田先生の説に至っては、仰天するばかりで、アジアの国のあのプラスチックで覆われた川で、死んでいる魚や、その水を飲んでいる人や、魚の奇形、クジラの胃袋から、ビニールが出てきた記事をどう説明するのでしょうか?

餓死したクジラ、胃にビニール袋80枚
プラスチックごみが約8キロも、救助しても餌食べられず、タイ

クジラの体内から重さ6キロのプラスチックごみ
カップ115個、ビニール袋25枚など続々

「 人間はC-Cボンドをすぐに分解できないので、食料にすることはできないが、多くの生物はこの貴重なエネルギー源を利用する。海洋に流出したプラスチックは一部の微生物にとって貴重な食料であり、分解して自分の体にしたりエネルギーにしたりする。これが海洋に流出するプラスチックが減少する理由である。 」に至っては、もはや何をかいわんや?プラスチックのゴミが微生物の栄養になって、微生物は、プランクトン、小さな魚の餌となり、食物連鎖で、人間の口に入ることを歓迎すべきことのような説明です。本気で、このようなプラスチック成分を食料とした生物を、子供や孫に人間の食料として食べさせる気持ちなのでしょうか?

「 筆者は20年にわたって多摩美術大学でデザインを教えてきたが、デザインや映像でやってはいけないことは自らの才能を生かして「事実ではないこと」を強く印象付ける手法をとることである。これは絶対「NO!」である。 」と力説されていますが、同じ過ちをご自身でされていることに気が付かないのでしょうか?

常日頃、武田先生の多くの意見に賛同するところがあり、敬意をもって拝聴していますが、このプラスチックごみに関しては、全く賛同できません。もはや、老害の症状が出てきたきらいがあります。

この記事を見られた方は、どのように感じられるでしょうか?

以下に、武田先生の「「プラ製ストローは害」という欺瞞に日本人が付き合う道理はない」の全部を引用しておきます。引用先は、こちらです。

武田邦彦(中部大学特任教授)

 環境省は「日本近海にプラスチック廃棄物が多い」と発表し、プラスチック・ストローの環境破壊を改善するため、紙製ストローを製造する企業に補助金を出すという。ちなみに、紙製のストローには防水加工のため塗料が使われており、この塗料による環境汚染については、語られない。

 筆者の友人で新潟の海岸線に住んでいる方からのメールによると、「確かに海岸に漂着するプラスチックごみは多いが、その大半は中国で捨てられたことが明らかだ。また、私は一度もストローは見たことがない」という。
 日本は科学技術立国と言われるが、「科学」というのは「思想」を後退させて、まずは事実を整理し、考えること、そして自分の考えを他人に押し付けないことが基本だ。だが、「環境問題」は常に他人を押さえつけるために使われてきた。
 これらのことを頭に入れて論を進めていきたい。  環境省などによると、石油などから作られるプラスチックは年間約4億トン近く製造され、そのうち、約800万トンが海に放出されているという。だが、特殊で高価な工業部品以外のプラスチックは比重が1・0以下で軽く水に浮くので、もし分解されなければ海の表面を覆うはずである。すでに40年ほど前からプラスチックは大量に使われているので、海に放出されたプラスチックがそのまま漂流を続けていたら、海水面はプラスチックで覆われている計算になる。
 しかし、現実はそうなっていない。ならば、プラスチックが海に流れることは道徳的には望ましくはないが、科学的にはプラスチックによる海洋汚染は当面は考えなくてもよいことになる。これは以下に示す科学的原理や、長年の実績とも合っている。
 そもそも、プラスチックは油性だから海に存在する有害な有機性化合物が付着すると言われているが、魚もプランクトンもプラスチックと同じ油性である。プランクトンや魚の存在量は明確ではないものの、40億トン程度とみられ、それからみると、プラスチックの流出量は0・2%に過ぎない。ゆえに、大量の油性生物に対し、プラスチックが環境を汚染することはあり得ない。
 一方、地上の生物の食料はすべてCO2(温暖化ガス)が原料であり、それを還元して作る「炭素-炭素結合(C-Cボンド)」が生物の体を作り、エネルギーを供給する。したがって、生物の死骸である石油はC-Cボンドの化合物からなり、それは人間にとっても生物にとっても最も大切なエネルギー源である。
 人間はC-Cボンドをすぐに分解できないので、食料にすることはできないが、多くの生物はこの貴重なエネルギー源を利用する。海洋に流出したプラスチックは一部の微生物にとって貴重な食料であり、分解して自分の体にしたりエネルギーにしたりする。これが海洋に流出するプラスチックが減少する理由である。

 環境問題でよく出される写真に「海底でのペットボトル」などがあるが、これは実に不思議である。ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン類ならともかく、エステル結合を持つポリエステルが海底でそのまま分解せずに存在することは不可能だからである。おそらく、この手の写真は「投下されたばかりのもの」を選択して撮影していることは間違いない。

 筆者は20年にわたって多摩美術大学でデザインを教えてきたが、デザインや映像でやってはいけないことは自らの才能を生かして「事実ではないこと」を強く印象付ける手法をとることである。これは絶対「NO!」である。

筆者の著書『生物多様性のウソ』(小学館101新書)や『科学者が読み解く環境問題』(シーエムシー出版)で詳しく書いたが、1990年から吹き荒れているリサイクルの破綻、ダイオキシンや環境ホルモンの害の他、生物の絶滅が早くなっていること、温暖化で海水面が上がっていること、森林がCO2を吸収すること、アルプスの氷が解けていること、などはいずれも一部の科学者の見解であって根拠がない。
 リサイクルについては、「リサイクルしなければ8年で廃棄物処理場が満杯になる」という宣伝は、筆者が正確に計算したところ150年だった。また、「ダイオキシンは猛毒だ」と言われたときだけテレビに患者が出て、テレビが報道しなくなったら世界で一人の患者も出なくなった。今の若い人たちは「ダイオキシン」という名前すら覚えていないだろう。ゆえに、当時ダイオキシンが猛毒だと思っていた人がどういう情報ソースを持っていたかを検証することは意味がある。
 さらに、環境ホルモンについては、生物の多くがオスとメスが入れ替わる事実を大衆が知らないことを狙った全くのウソであった。これは質の悪い誤報にすぎなかった。他にも、温暖化はアルキメデスの原理や相平衡の温度など中学校で教える理科でも分かる非科学的な結論ばかりである。
 なぜ、こんなウソに大人がウロウロするのかというと、「科学オンチ」、「感情優先」、さらには「環境利権」がキーワードだが、もっと端的に言えば「日本人の幼児化」だろう。
 プラスチックは年間4億トンも使っているから、汚染の可能性はあるが、現実には800万トン程度しか海に流出しておらず、さらにプラスチックが大量に使用されてから数十年も経て、今ごろ「海洋がプラスチックで汚染されている」という事実もないのに騒ぎだけが始まる。
 特に、日本の環境省はひどい。日本近海のプラスチックのほとんどが中国で流され、それが海流に乗ってきていることを知っていて、国際的に「日本近海が多い」と表現するのだからはっきりした反日官庁である。
 環境汚染を防止するというのは「まじめな活動」でなければ意味がない。「事実として海洋を汚染していること、海洋におけるプラスチックの分解が遅いこと、特にポリエチレン、ポリプロピレンの分解がどうなっているか」など重要な環境科学は研究の必要はあるが、緊急性はない。
 まして、プラスチック・ストローなどは海洋に放出されるプラスチックの1万分の1にもならないことは明白だ。それを問題にするのだからまさに「幼児」と言えるだろう。

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