その廃プラ対策は本当?

2019年5月17日 中日新聞より

読みにくいの文字を起こします。

廃プラの輸出にバーゼル条約の規制がかかる。有害廃棄物の国境を越える移動を防ぐ取り決めだ。リサイクルにはコストがかかる。海洋への不法投棄を減らすためには、元を絶つのが、いちばんだ。

誰もが海の”救い主”

海洋汚染対策の「脱プラスチック」は、温暖化対策の「脱炭素」と並び、地球環境が直面する二大テーマになった。
 世界では年間四億トンのプラスチックが製造されており、その半分が使い捨て。毎年八百万トンが海へ流れ込む。軽くて丈夫が売り物である半面、自然分解されにくく、海中にたまる一方だ。
 マリアナ海溝のI万メートルを超える深海からも、プラスチックごみが見つかっている。二〇五〇年には海を漂うプラスチックの総重量が魚のそれを超えるともいわれている。海は悲鳴を上げている。
 海中で砕けた微細なものは魚を介して人体からも検出され、健康への影響も懸念されている。
 日本は米国に次ぐ世界第二の廃プラ輸出国。年間百五十万トンを途上国などに送り出してきた。
 バーゼル条約は、洗浄が不十分だったり、異物が混入したりした 「汚れたプラスチック」の輸出に規制をかけるというものの、できるだけ国内で処理するよう求めており、輸出は原則、困難になるとみるべきだ。

それなら、リサイクルに向かえばどうかといえば、プラスチックは素材としての再生利用が難しい。汚れたものは洗浄に、異物が混ざれば選別に、コストや手間暇がかかりすぎるのだ。
 日本では、廃プラリサイクルといわれるものの過半が、廃プラを燃やして、その熱をJ再利用″する「サーマルリサイクル」。体のいい焼却処理だ。
 プラスチックは石油製品。燃やせば多くの二酸化炭素(CO2)が排出される。来年、温暖化対策の新たなルールのパリ協定がスタートすれば、この手も使いにくくなる。結局は「脱プラ」、すなわち、プラスチック製品自体を減らごしていくしかないのである。

プラスチック製レジ袋の無料提供を法律で禁じているのは、約八十カ国。三十カ国近くはストローなど使い捨て製品の使用を禁じている。だが、法の規制に頼る以前に、今日からできることがある。
 例えばこのごろ、コンビニのレジでも「袋に入れますか」と聞かれるようになってきた。「いらない」と答えることが、結局は海を救うことになるからだ。

これに関連して、さらに2019年7月5日の中日新聞より

読みにくいので文字を起こします。

温暖化と海のプラスチックごみー。G20サミットの焦点になると言われた地球の課題。ところが終わってみれぱ温暖化は足踏み状態。プラごみは先送り。先送りして困るのは、議長国日本では?

海のプラごみ 30年先では遅すぎる

ヲラスチック汚染から私たちの美しい海を守るため、世界が一致して大きな一歩を踏み出すことができた」―。G20の議長として閉会後の記者会見に臨んだ安倍首相は、自画自賛した。

G20は「二〇五〇年までに海へのプラごみ流出ゼロを目指す」とする「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を共有した。美しい名称だ。しかし、どうやってなくしていくかは、各国の自主性に委ねられ、実効性の保証はない。
 「五〇年までに海中のプラスチックの量が魚の量を超える」と、三年前のダボス会議で報告されている。三十年先では遅すぎる。

首相は会見で「日本から海洋プラごみが海に出ているというのは、誤解です」と主張した。この認識には違和感がある。

環境省の資料によると、発生量 (一〇年推計) 一位は中国、続いてインドネシア、フィリピン、ベトナムと四位までが東、あるいは東南アジアの国々だ。
 日本の三十位、年間推計二万~六万トンが多いか少ないかはさておくとして、日本からは一年に百五十万トンのプラごみが、これらの国々に資源として輸出されていた。
 日本からの″輸出品〃の一部が使い物にならずに捨てられて、海を汚し続けてきたとの恐れは強い。海洋への流出ルートに関しては、不明な点も多いという。

一昨年末、最大の輸出先だった中国が受け入れを停止した。折しもG20の開催に合わせるかのように、インドネシアがプラごみの輸入を禁止する方針を打ち出した。
 「日本の経験と技術をフル活用し、途上国の能力構築にも取り組んでいく」と、いまだ首相は″環境先進国目線〃だが、輸出できないプラごみが港などに山積み状態にされているのが、″先進国″の現状だ。環境省は廃棄物処理業者が一時保管できるプラごみを二倍にするという。あくまでも一時保管。切迫感の証しである。行き場のないごみが ″闇″に落ち、いつしか海にーということにもなりかねない。
 まずは国として自国での発生抑制に本腰を入れ、″脱プラスチッタの先行例を速やかに世界に示すことこそ、G20議長国のあるべき姿とは言えないか。

海のプラスチックごみに、世界の関心が集まり、世界の国々が取り組み解決していかなければならない課題ということが、常識的になってきました。

20150年には、海中のプラスチックの量が、魚の総重量を超える。毎年八百万トンのプラスチックが海に流れ込む。食物連鎖を通して、人の健康に悪影響を与える。その通りです。

そして、社説の結びとして、発生抑制に本腰を入れ、「脱プラスチック」の先行例を世界に示すことがG20の議長国のあるべき姿ではないか?コンビニやスーバーで「レジ袋をいらない」ということが海を救うのではないかと。

人々への啓もうや、理想は必要です。理想を忘れてはなりませんが、理想だけが先走り、現実的な対策も必要ではないでしょうか?

リサイクルできない、汚れたプラスチックは、外国で受け入れられなくなりました。
中国が、世界の半分のプラスチックごみを再利用していたのですが、経済的な問題と、環境的な問題で、買い入れを止めたからです。中国に安く販売していた国は、持って行き場が無くなり困ります。日本は年間130万トン~150万トンのプラスチックごみの処理に困って、アフリカ等の国も探したのですが、結局持って行き場がなく、環境省は、地方自治体に焼却処理の要請をしています。考えによっては、廃プラを燃やしてその熱を再利用する「サーマルリサイクル」。体のいい焼却処理だ。と非難されています。しかしよく考えてください。火力発電所は、重油を燃やして、電力を作っています。重油と廃プラとそんなに違うのでしょうか?廃プラを利用すれば、その分重油が削減できるのではないでしょうか?

もちろん、重油と、重油を精製後に製品となった、プラスチックは、燃焼形態が異なるということもあるのかもしれません。しかし、現在は、プラスチックを燃焼させる燃焼炉も販売されています。燃焼方法や、冷却方法で、ダイオキシンの発生も抑制できるようです。持って行き場のない廃プラを積極的に利用することは、非難されるべきでなく、現実的な解決方法ではないでしょうか?

廃プラの処理に困り、海に不法投棄したり、アフリカなどの開発途上国に、押し付けるより、よほど、現実的だと思うのです。そして、日本ができることは、優れた焼却炉を東南アジアに販売を勧めたり、ODAで援助して、使ってもらうことも現実的な方法です。

G20参加の政治家も、新聞の社説を書く、論説委員にも、是非にでもお勧めしたいのが、街のゴミ拾いです。自分の国の自分の街に、川に、道路にどういうゴミが捨ててあるか?自分の目で見ることをお勧めします。

一番多いのが、たばこの吸い殻、ペットボトル、お菓子の袋、ジュースの空き缶、紙ごみ、人通りの少ない道路には、レジ袋に大量にゴミを入れて、そのまま投棄してあります。公園の駐車場には、使用後のコンドーム。時には、レジ袋に入った犬や猫の死体。

町のゴミ拾いをしていると、歩いていてもどうしてもゴミに目が行きます。海に行くと漂着しているゴミに目が行きます。海のゴミで多いのは、ペットボトルや漁具、灯油タンク、中には、注射器も漂着しています。ゴミを拾っていると、見るところや考えるところが全く異なってきます。昔は全く気が付かなかったことが不思議になるほどです。

日本でも、外国でも、業者が集めた、廃プラは、処理に困り集積してあることが多く、海やの不法投棄は、さほどありませんが、これらのゴミは、殆どがポイ捨てゴミなのです。町で、ポイ捨てられたペットボトルは、雨や川に流れて海へ流れ込みます。

インドの一地方では、レジ袋が禁止されて、取締官がお店に立ち入り、隠し持っているレジ袋を没収しているところもあります。レジ袋だけが悪者になってますが、一方では、町行く人は、街に流れている川の橋を渡る時に、川にゴミを投げ捨てています。さも川をゴミの処理場と思っている感じです。川面は普通は水が見えますが、ポイ捨てが普通の所では、水が見えません。川の表面はすべて、ゴミで埋まっています。川の表面にゴミが浮いているのです。これらのゴミが海に流れて、東シナ海を流れ、日本にたどり着くもの、海水や紫外線で、マイクロプラスチックとなるものが現実なのです。

日本で、ポイ捨てされたプラスチックごみは、日本海や、太平洋へ流れ込み、ハワイ周辺を漂い、北太平洋が漂流ゴミの滞留場所となっているのです。
ごみの漂流を図示したものがあります。

Lebren et al.,Mar.Pol.Bul.2012 より

北太平洋、南太平洋、北大西洋、南太平洋、インド洋が特に高密度と言われいます。

「レジ袋いらない」も結構でしょう。「脱プラスチック」も結構でしょう。しかし、今すぐに止めなければならないことは、ゴミの不法投棄は、厳重に処罰することはもちろんのこと、日本人にも、世界の人にも、”ごみのポイ捨ては止めること”を啓もうし、教育し、実行しなくてはならないのです。

G20の政治家も論説委員も、メディアの人たちも、すべてこの現実的な対策に踏み込まないことは何か理由があるのでしょうか?なぜ、すぐにできることをしないのか?うがった見方をすると、既得権益を害するのか?

しかしながら、そんな憶測をしている時期ではありません。海をこれ以上汚さないためには、将来の子孫を守るためには、いますぐに、”ごみのポイ捨ては止めること”

なのです。

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